2014年度6月度那須農場復興支援労働のご報告

2014年度6月度那須農場復興支援労働のご報告

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6月28日~29日、那須農場の復興支援労働に初めて参加させて頂きました。
実は那須農場の労働には以前から参加したいなとは思っていたのですが、きっかけが無かったためになかなか踏み切れずにいました。

そんな私の背中を押したのは5月の労働報告を書いた、同級生の悪友K君の一言でした。
「いやぁ俺もこの前、初めて労働に行ったんだけどさ。何かいいんだよね。お前も行ってみたら。きっと心が手ぶらで帰ることはないよ」
学生時代にはおおよそ労働などとは無縁だったK君がそこまで言うのなら行ってみてもいいかなと、ようやく行動を起こす気持ちになりました。

しかもこの日は地方同学会と重なっており、いつもなら労働に来る人たちが来られないため、頭数が少なくて困っているということもありました。そして我々44回生は本部委員会クラスであり、復興支援担当副委員長の白井君が陣頭で旗を振っている姿に心を動かされたというのも重なったのだと思います。きっと少しは役にも立てるかもしれないとも思い、参加することにしました。

前日に買った長靴や雨天用の装備も積み込んだ愛車のポルテに乗り込み、東北道を飛ばすこと3時間足らずで那須に着きました。天気はあいにくの雨。それも相当降ったせいかカーナビの指示通りに進むと川は増水のため道が塞っており、迂回しなくては着かないような状況。それでもなんとか予定通りに那須農場に着くと、懐かしい農場の姿がそこにありました。と言っても、この前にここを訪れたのがいつだったのかも思い出せないくらい前の話。ひょっとしたら高等科1年の労働の時以来なのだろうか、それともその後にブラスの合宿で来たことがあっただろうか?

そんなことを思い出しながら着替えをしているとマイクロバスが到着して労働メンバーがやって来ました。一時の強い雨は去ったものの、相変わらずの雨天の中、労働を始めることになりました。

リーダーの白井君から分担が発表され、それぞれの持ち場に移って行きました。私は子牛小屋の壁直しを担当することになりました。相棒は45回生のF君。彼とは学生時代に”放送の係”で一緒に働いていた仲なので勝手知ったる関係。何をやるにせよツーカーでできるので実に頼もしい。とはいえ何をやるのかは全く分からない中で、とりあえず担当する現場の牛舎へ向かいました。

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牛舎に着くとそこにはちょっといびつに積み上げたブロック塀と、いくつかの転がった木材、それにモルタルの袋が置いてありました。幼方さんからは「この壁に窓枠を作ってほしいんだ」と言われました。と言っても設計図があるわけでも、指示書があるわけでもありません。しかも私もF君もモルタルを扱うのも初めてのこと。
「設計図もないし、やったこともないモルタルなどどうしたらいいか分からないです。ちゃんとわかるように説明して下さい」などと言わないところが男子部の卒業生。なんとなくきっとこんな感じにしたいのかなぁとイメージを描くだけで、やったことがないことにでもとりあえず挑戦してしまう。まずは手始めにモルタルと水を混ぜてしまうわけです。

最初は水とモルタルを袋の説明書のバランス通りに測って混ぜなくてはなどと思っていたものの、結局は目分量で大胆に混ぜてしまい、やっていくうちに段々加減がわかってきました。そしておっかなびっくりではありながらも、ブロック塀にモルタルを塗っていきました。作業の厳密さもどれほどのものが要求されるのかが分からないので、初めは水準器で水平かどうかを測りながら厳密な作業をやっていたものの、そのうちそこまでの厳密さがなくても、大体で大丈夫だとわかるとそこからは作業スピードも上がりました。

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壁をだいたい塗り終えると、今度は窓枠の作業へと移りました。もともとある天井やブロック塀などを活かしながら窓枠に材木を設置していきました。これもその場に転がっている材料を当てはめながら「こんな感じでいいかな?」となんとなく作業を進めていきました。完成形のイメージを共有すると、分担するわけでもなく一人が木を押さえて一人が電動のこぎりで木を切り、一人が木を抑えて一人が電動ドリルでネジを止めていく。まるで学生時代に”放送の係”で一緒に働いていた時のような感覚が蘇ってきました。

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夢中で働いていると時の経つのは早いもの。気がつくと3時間ほどがあっという間にたち、1日目の労働時間は終わりました。それでもなんとか壊れている壁の一つは完成することができました。幼方さんは「明日、完成するかなぁ…」と不安げにこぼされていたので、「完成するまで帰りませんから」と言い切りました。せっかく来たのだから、なんとかやり遂げたいし、この感じならばきっとあと半日あればもう一つの壁もなんとかなるだろうという手ごたえがありました。

その夜は近くの温泉に入り、おいしい肉じゃがと豚汁の夕飯をごちそうになりました。夜は酒を酌み交わしながらその日の労働の話や、昔話に花が咲き、11時には就寝しました。

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翌朝は相変わらずの雨。5時に起きて、牛に餌をやったり、牛舎を掃除したり、サイロから干し草を運んだりと1時間ほど働きました。日ごろデスクワークばかりの私たちにとっては、寝起きにこれだけの労働をするのは結構応えます。那須農場の人たちはこれを毎日、3人でやっているとは驚きです。本来ならば教育農場のはずなのに、肝心の学生が来ることができない現実。震災の後、陸前高田にボランティア活動に行ったり、宮古市に復興支援活動に3カ月ほど常駐していたことがある私にとっては、沿岸だけでなく、福島第一原発からおよそ200kmも離れた山中にまでこうした震災の被害が及んでいるという事実を改めて認識させられました。

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朝の労働の後、食堂でコーヒータイムを取り、続いて朝食。ここでもおいしいクリームシチューを用意して頂きました。

朝食後は8時から労働開始。リーダーの白井君の配慮で、できるだけ昨日とは異なる仕事を経験してほしいと、分担を変更して作業が行われました。とはいえ、牛舎修理の作業はなかなか誰かに交代というわけにもいかず、また私自身もなんとか完成させたいという思いもあり、そのまま作業を継続することにしました。

実は前の晩から、明日はあの材料を使ってこんな風にやったらいいのではないかと、頭の中で構想を巡らせていました。現場で幼方さんとF君にそれを説明するとまた違ったアイデアも出てきました。その場で3人で検討し、ざっと方針を固めて作業へと移りました。その程度の打ち合わせで互いになんとなく分担も決まり、それぞれがそれぞれの作業に移ることができる。
この感じはどこかで覚えがあるな…。そうだ!
『君は川流を汲め。我は薪を拾わん』の、まさに寮歌だ。

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そんなことを考えながらも、一心不乱に壁にモルタルを塗っていると、いつの間にか朝から降っていた雨は止み、空には青空が広がっていました。遠くでは草刈り機の音が聞こえていました。きっと他のメンバーも黙々と働いているんだろうなと思いました。なんとか昼食までには窓枠を完成することができました。農場の方も「こんなにしっかりできるんですね」と喜んで下さいました。幼方さんも「春からずっと放置されていた課題がやっと片付いたよ」と嬉しそうに笑ってくれました。少しは役に立つことができたかなと思いながら、昼食の美味しいカレーライスを食べてある種の満足感を感じることができました。昼食の後は自分たちが泊っていた宿舎の掃除をして、2時ごろに農場を後にしました。

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2日間を通して驚きだったのが、参加した人それぞれの働き方です。たとえば食事の後。東天寮ならば誰が食器を洗うかを決めるために恒例の”アッサ(ジャンケン)”となるところですが、ここでは誰というわけでもなく食器を運んでいる人がいるし、洗っている人がいるし、ほうきで床を掃いている人がいます。帰る前の掃除でも、誰が分担するわけでもなく、トイレやお風呂を掃除している人がいます。そして来た時よりもきれいにしているのでした。そういうことができてしまうところがさすが自由学園の卒業生ならでは何だなと驚かされました。そして25人分もの3食を作って下さった女子部の卒業生の皆さん、どれも美味しく、優しい味でした。本当にありがとうございました。

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皆を乗せたマイクロバスが農場を出発した後、遅れて出発した私は農場の誰もいない場所に車を止めて、トランペットを取り出しました。そして誰もいない田んぼに向かって、人目を気にすることなく爆音を奏でながら、こう思ったのでした。
「確かにK君の言ったとおりだ。手ぶらで帰ることは無かったな…」と。

水谷 世希(D44)

<6月の労働内容について>

6月の復興支援労働は、梅雨空の下、28日(土)と29日(日)の2日間で行い、同学会、卒業生会等より総勢17名にご参加頂きました。

今回の労働内容は主に下記のとおり。
①農場内幹線道路脇および施設周辺の雑草刈り取り
②デントコーン害鳥除けの撤去
③牧草ロールの運搬
④乾乳牛舎の壁面修繕
⑤牛舎清掃、作業補助
⑥整地作業

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労働初日はほぼ終日雨、2日目の早朝は大雨と、この時期としては致し方ない天候でしたが、各自長靴を履きレインコートのフードやキャップを被り、また天候が回復した2日目の午前は強い日差しの下で流れる汗をタオルでぬぐいながら、夫々担当した持ち場での作業に臨みました。

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皆さんの頑張りのお陰で、牧草ロール運搬作業では、牧草地から移動先の牛舎近くまでをトラックで数十往復して120~130個のロールを運び終え、エンジンカッターを用いた雑草刈り取り作業では、施設周辺の他、主要道路両脇約500メートルを刈り終えることができ、また、その他予定していた作業も2日間をとおしておおむね完了することができました。
ご参加下さいました皆さん、遠くからご支援・応援下さっている皆さん、そして那須農場の皆さんに感謝申し上げます。

来月7月は、支援労働の日程に合わせ、同学会本部委員会を那須農場で開催する予定です。

震災復興支援室

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