2016年5月度那須農場復興支援労働報告
<体験レポート(53回生 須藤さんより)>
自由学園男子部53回生の須藤剛と申します。今回、5月度の那須農場の支援ボランティアと田植えに初参加させていただきました。得るものが大きかったので感想を投稿させていただきます。
私がこの活動募集を知ったのは、今回お世話いただいた濱田さんのfacebook上でのお知らせででした。意外だったのですが、こうしたきっかけで参加した人は珍しいらしく、常連の先輩方々から「誰に誘われたの?」「誰かから来いと言われたのか?」「誰に脅された?」といろいろ声をかけていただきました。
無論、労働期間中おそろしいことは何一つ起きず、学園の先輩といっても私には初対面の方がほとんどだったのですが、皆さま親切に暖かく迎えてくださり、気持ちよく労働に汗を流すことができました。
那須農場に行くのは高等科以来でしたが、まず立派な宿舎が出来ていたことに驚きました。逆に放牧地から牛舎へわらわらと牛が帰ってくる様子など、あっ、これは20数年前に見た光景だ、と思いだす所が多々あり嬉しくなりました。
今回、初日は田植えに参加しました。裸足で田んぼに足を突っ込み、手作業で稲を植えていきます。目印をつけたロープに合わせて植えていくのですが、ここでまっすぐに植えておかないと、刈り取りのときに大変なのだとか。地元の農家の方が指導してくださったのですが「秋にはちゃんと責任持って刈りにきてね。」はいっ!
小学生も一緒になって田植えをしました。が、稲よりカエルとりに夢中の子も…。こらっ、カエルを人の肩にのっけるんじゃない!
作業の後は、近くの温泉で疲れを流し、夕食→ビールへと。宴が大いに盛り上がった中、11時に終了。食卓の片付けですが、濱田さんの「食当は全員ね!」という声が。ああ、食当…。食当という響きにオレは自由学園に帰ってきたのだ、という実感がしました。
2日目は朝5時から牛舎の労働。これは「有志」とスケジュール表で見たのですが、見たところほぼ全員参加してるような。おそるべし。牛糞を始末し、エサをまき、地下数メートルの穴に入ってフォークで飼葉を積み…。
オレは20数年前のオレに比べてちょっとは使える奴になったのか、オッサンになって力は衰えてないか…。そんなことを考えながら全身フル稼働の肉体労働でした。重い物を持ち上げる、運ぶ、そんな人の「仕事」の始まりのようなことを久しぶりにこなし、なんともいえない充実を感じました。
私は普段、阿佐ヶ谷でブルドッグ整体院という店を開業している整体師です。身体とは何なのかと向き合うことが仕事なわけですが、その事と絡めて感想を述べさせていただきます。今回、ほんの短い時間とありあわせの用意だったのですが、農場の職員の方を施療させていただく機会がありました(そのような限られた状況だったので、お粗末な施療でしたが)。
痛いとおっしゃっていたのは背中や腰であり、原因として考えられるのは農場での力仕事やトラクターの運転などでした。立った姿で全身をみると、やはり肉体を酷使しているなりの骨格の大きな歪みがありました。都会の人とは対照的な身体です。
過去にも農家の方を施療する機会があったのですが、やはり骨格の歪みこそ大きいものの、施療するには扱いやすい身体でした。日々運動している身体は元来の生命力が強いというか、自身がどう反応すれば良いかが分かっているので、施療者の言う事を素直に聞いてくれるような感覚があります。また多少強めに扱っても問題ない頑丈さがあるので、大胆な施療ができます。
応急処置のような施療でまだまだ骨格の歪みは残っているものの、痛みは解消することができました。施療する方は疲れないのか? と質問されましたが、こういう元気な身体は施療してもそんなには疲れないものです。むしろ、都会でちょっと乱暴に扱えばかえって痛めてしまう神経質な身体を施療する方がよっぽどヘトヘトになります。
普段、私が仕事をしているのは都心に近い住宅地であり、お客様のほとんどは都会での生活に慣れた方ばかりです。仕事で一日中座ったままパソコンで作業していたり、主婦やご高齢の方でも、あまりふだん身体を使うことがない。そして、まったく運動をしない方も多いのです。
本来、身体は各場所がお互いつながり合い、連携をとりあうことで上手く機能するようにできています(例えば、首が痛いといっても腰の方に原因があれば、そこを調整することで首の不調を改善させたりするわけです)。それが上手く機能してないので身体が言う事を聞いてくれず、施療には手こずります。
施療できればまだよいのですが、さらに高齢だったり弱っている身体だと施療すること自体が難しくなります。少しでも強く扱うとかえって痛めてしまうほどデリケートなので、不調の根本的な解決ができず、来た時よりは楽になるというその場しのぎで帰っていただく位しかできなくなってしまうのです。
ごくたまには、身体の調子が悪くなればお金を払ってメンテナンスをしてもらう。それで良くならなければ、それは提供されたサービスが悪い…。そんな風に考えてるんじゃないか、と思わしきお客様もいます。
身体とは、我々の最も近くにある自然であります。私は都会に住むうちに、生活が自然と乖離していくことを感じるのですが、そのうち最後に残された自然である人間の身体をも、思考が乗っかるだけの機械として扱われるような心配を感じます。整体師という仕事はいわば健康を商品として提供しているわけですが、本来、身体=自然とは人間だけの都合や金銭では扱いきれるものではないわけです。
前述のような身体のケアも他人任せのお客様だと、やはり整体も効果が表れにくい。ある意味で外部からアプローチするのと同時に、身体の内部からも良くなろう、という働きがなければ本当の意味で健康にはなれません。自分の身体に、頼りにしてるからよろしく、とコミュニケーションをとるのが大事なわけです。それをどうやってやるのかと言えば、毎日ちゃんと身体を使ってあげるということです。
農業をしている方に触れるたび、きれいな空気を吸って、朝起きて身体を使って働き、ちゃんとした物を食べて夜は眠る。そんな自然と共生した生活が、人間にとって真っ当なんだろうなと考えたりします。そして、健康が商売のはずの整体師が不健康な都会で生活している。これって矛盾だよな、なんて考えたりもします。今回ごく短い時間でしたが、そんなジレンマから抜け出すことができました。
搾りたての牛乳、アイスクリーム美味しゅうございました。田植えした稲の成長も楽しみです。土日の都合が合いましたら、また参加させていただきたいと思っております。
<5月の労働内容について>
5月度は5月7日・8日で行われました。主な作業は下記の通りです。
またゴールデンウイーク中も、プライベートで那須に来た人が労働に参加致しました。
6月は18日・19日に実施です。皆様の参加をお待ちしております。
那須農場復興支援室
濱田 宏太郎