東北在住者の会報告 - 自由学園南沢会

―地方を知る機会に―　

広いエリアに卒業生が点在する東北地方では、「自由学園東北の会」（東北在住の卒業生会会員・同学会会員の集まり）を、各県持ち回りで１泊２日で行なっています。東日本大震災から８年を経た今年は、7月20～21日に宮城県で、「貸切バスで仙台～十三浜を巡る旅」を行いました。第１部は、仙台の広瀬川河畔に建つイタリアンレストラン「パリンカ」での親睦昼食会。第２部は、女子部男子部をはじめ、震災支援活動の際にお世話になる山あいの一軒宿「追分温泉」で。第３部は交友深まる石巻市北上町十三浜の方々との交流会と、盛り沢山な２日間。東北在住者以外に、支援活動などで訪れた卒業生にもお知らせしたところ、北は北海道、西は岐阜県まで、20代～80代の42人（卒業生会29人/同学会11人/家族２人）が参加して下さいました。

第１部では、自由学園の震災支援責任者として、被災地に度々足を運ばれた小田先生（D13）や、支援活動を支えて下さった三木前協力会会長（D14）の温かなスピーチに続き、高橋学園長（D40）からは、学園の現在と次の100年に向けた熱のこもった報告が。それらを心に刻み、一人ひとり近況を述べ合いました。シェフの小関さんは、十三浜との交友から生まれた料理本『三陸わかめと昆布　浜とまちのレシピ80』（婦人之友社刊）にレシピを提供されており、十三浜の塩蔵昆布を使った料理をメニューに加えて、盛り上げて下さいました。

自由学園に連なる者同士の親しみにあふれた３時間を過ごしたのち、一路石巻へ。震災支援活動で幾度となく通った三陸自動車道から見える景色には、もはや当時の面影はありません。しかし、震災の痛手は今も残り、復興も途上です。児童ら74人が犠牲になった北上川沿いの大川小学校跡を慰霊に訪れ、石巻市復興まちづくり情報交流館北上館で、津波襲来時の記録映像を見せていただきながら、あの日あの時を胸に刻みました。

宿泊した「追分温泉」の夕食には、ご主人で料理長の横山さん心づくしの三陸の海の幸がずらり。ゲストに招いた十三浜の佐藤さん（高２）に、小学２年生で遭遇した震災の体験を聞きました。小さい頃から「おっかあ、自由学園いつ来るの？」と、学園生の来訪を心待ちにし、活動を助けてくれている佐藤さんとの再会に、感慨一入の参加者も。感謝を込めて、学園長から自由学園のトートバックが手渡されると、温かい拍手に包まれました。被災した方々の、８年の歳月を思わずにはいられませんでした。

夜行バスで東京から到着した92回生3人も合流し、十三浜へ向かった２日目。92回生は2011年の夏、支援活動で最初に十三浜を訪れたクラスです。津波の襲来が信じがたい風光明媚な海岸線を巡り、交流のある漁師さんの案内で、作業場や復興した漁港を見学。津波で家も船も仲間も失いながら、海を憎まず、海と共に生きておられる漁師さんたちに接し、生徒のみなさんが、十三浜で大切な学びをしていることが想像されました。

浜の方々との交流昼食会では、自由学園生の「浜のお母さん」のような存在の佐藤さん始め、漁家の女性のみなさんが、ウニを剥き、朝獲りのカレイを刺身にし、昆布やわかめを料理し、北上川のシジミ汁まで用意して待っていて下さいました。温かいおもてなしに感激するばかりです。漁協十三浜支所前運営委員長・佐藤さん、相川地区コミュニティー推進協議会会長・鈴木さんはじめ、生徒たちが伺っている漁師さんたちと食卓を囲む中、互いに口をついて出たのは感謝の思いでした。震災直後から、「自由学園（卒業生を含む）、婦人之友社、全国友の会」が協力して行なってきた支援活動が、十三浜のみなさんとの信頼と交友に発展したことに感慨を覚えます。会場の相川地区コミュニティセンターに、自由学園のパンフレットや毎号の婦人之友が並べられていたのも印象深いことでした。

後日、参加者から「迎えて下さった十三浜の方々を通し、長く変わらない親身な心配りを続けていらしたことを感じました」「心に響いた旅でした」等々の感想が。女子部卒業生の集いから始まった「自由学園東北の会」。男子部卒業生にも呼びかけ、やがて卒業生会、同学会の両委員長、学園からも参加して下さるように。泊りがけの会だけに準備も大変ですが、卒業生の親睦を深め、自由学園の教育への感謝を新たにすると同時に、人口減少が進む中でがんばる地方を、遠来の方々に知っていただく機会としても、意味があると感じました。来年は青森での開催に決まりました。　（55回生　庄子、島津、小山記）

2019100201 イタリアンレストラン「パリンカ」前にて